日常生活習慣で重要なのは運動です。運動は脳からのセロトニン分泌を介して意欲を向上させ、うつ病を予防、老化遺伝子、ガン遺伝子、肥満遺伝子等を抑制すると言われています。また運動は認知機能を維持、骨粗鬆症、寝たきりの予防にもなります。ここで重要なことは「適度の運動」=「有酸素運動」であり、「激しい運動」=「無酸素運動」は、高齢者では発生した乳酸、活性酸素により組織障害が進行、生活習慣病、老化を促進することです。
では有酸素運動とは何でしょうか?有酸素運動とは細胞に十分な酸素が確保できる運動、すなわち、ゆったりとした呼吸の運動で、細胞内のミトコンドリアに十分な酸素が供給され質の良いエネルギーが産生される長時間持続可能な運動です。有酸素運動では脂肪が燃焼、発生した活性酸素の消去系も亢進するので体に良いとされます。代表例が散歩です。
毎週どの位、運動すれば良いのでしょうか?そこでMETs(メッツ、運動強度)とEX(エクササイズ、運動量)の考えが登場します。METsとは安静時、座位の状態を1METsとした運動の強さです。立位は2METs、時速4kmの散歩は3METs、時速6kmの早歩きは4METsです。METsに時間を掛けたのが運動量であるEXです。例えば散歩を1時間すると3METsx1時間=3EX、早歩き1時間では4METSx1時間=4EXとなります。厚労省は65才以下では週23EX以上の身体活動、更にはその中に活発な運動4EX入れることで生活習慣病、生活機能低下の予防効果があるとしております。計算式からは活発な運動4EXはジョギング(6METs)なら週40分、水泳(7METs)なら週30分で達成できる勘定です。しかし散歩1時間を7日間がんばっても3METsx1時間x7日間=21EXしかなりません。ここで留意すべきは、身体活動とは運動以外の日常生活活動も含めることです。例えば料理は2METsですので毎日1時間すると2METsx1時間x7日間=14EX、掃除は3.5METsですので毎日30分すれば3.5METsx0.5(時間)X7日間=12.5EXとなります。同様に庭仕事は3-3.5METs、自転車は4METs等と通常の生活活動は2-3METs以上ですので程々に体を使い、散歩すれば週23EXは容易に達成可能です。しかし週23EXの身体活動はあくまで健康維持の為であり、30-60才代の肥満者が内臓脂肪を減らすには週30-40EX以上の運動、しかも1回30-40分以上の運動が必要です。事実、1年で内臓脂肪量が著明に改善した人達は食事療法に加えて毎日10、000-15、000歩位散歩しております。なお65才以上の高齢者では、より少ない週10EXが目標にされていますが私の経験からは足りないと思います。しかし定期的に運動している人は、量が足りなくても約20%のリスク軽減があるとされていますので運動習慣は重要です。
最後に若い時、運動をしてない高齢者でも効果はあり、手遅れと思われる人程効果があることが確認されております。その為、現在、介護保険非該当のハイリスク群にもトレーニングを実施する地域支援事業が開始されております。