脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪がありますが健康上問題になるのは内臓脂肪です。内臓脂肪は皮下脂肪に較べて代謝が活発であり、付きやすく落としやすい特徴があります。女性はエストロゲン分泌の為、皮下脂肪が多いのですが不規則な生活、エストロゲンが低下する更年期以降は注意しないと内臓脂肪が増加します。
脂肪細胞は吸収された余分な脂肪、糖質摂取によるインスリン分泌から合成された中性脂肪の貯蔵、体温の維持のみでなく生理活性物質(アディポサイトカイン)を分泌することが解明されています。アディポサイトカインには善玉と悪玉があります。善玉はアディポネクチンです。アディポネクチンが増えると中性脂肪は燃焼、インスリン作用増強・血管拡張により血糖・血圧は低下、更には傷害された組織の修復、炎症性物質の抑制により動脈硬化の進行を予防します。アディポネクチンは内臓脂肪が増えると低下、減ると増加します。一方、内臓脂肪は悪玉物質の分泌器官です。内臓脂肪から分泌されるTNF-αはインスリン作用の低下から血糖を上げ、PAI-1は血栓誘発から脳梗塞、心筋梗塞を引き起こし、アンジオテンシノーゲンは血圧を上昇させます。
肥満にも皮下脂肪型と内臓脂肪型があります。内臓脂肪型肥満に脂質異常症、糖尿病、高血圧症のうち2つ以上合併した場合、メタボリックシンドローム(以下メタボ)と診断します。内臓脂肪型肥満は正確には腹部CTスキャンによる内臓脂肪面積が臍の高さで100c㎡以上にて診断されますが、CT検査による評価が一般的には困難なので100c㎡に相当する腹囲である男性 85cm/女性90cm以上で診断します。
内臓脂肪を減らすには食事、運動が重要です。食事ではカロリー制限、低炭水化物(糖質制限)、低脂肪食に留意して食物繊維を多く含む野菜、海藻類、魚、大豆蛋白、穀類等を取ることが必要です。すなわち和食です。運動では脂肪を燃焼する有酸素運動が有用ですが、運動開始後20分間は筋肉に貯えられた多糖であるグリコーゲンが使用され、その後、内臓脂肪が燃焼するので30-40分以上の持続した有酸素運動が必要と言われています。なお糖質制限、または有酸素運動前に筋トレをすると蓄積されているグリコーゲン量が減るので、より早く内臓脂肪が燃焼するようになります。内臓脂肪が減少すると脂肪細胞は小型化、分泌される善玉の増加、悪玉の減少により生活習慣病は改善します。なお平成20年度よりメタボに注目した「特定健診・特定保健事業」が開始されています。