子曰く「それ、恕か」
一人の弟子が孔子に尋ねました。 「いろいろ教えていただきましたが、あまりに多くの物事があってよく判りません。結局、人間にとって、もっとも大切なものはひと言でいえば何でしょうか」、 何をいうかこの馬鹿者め、今まで一生懸命に教えたのに、自分の物覚えの悪いのを棚にあげて、人間にとって一番大切なものをひと言で教えろとはこの不勉強者めが、と思ったかどうかは別として孔子は怒りもせずに平静に答えました。
「それ、恕(じょ)か」
恕とは「思いやり」ということです。「思いやりが人間にとって、もっとも大切なことだ。」と孔子は
言うのです。思いやりという言葉は自分を基本にしては成り立ちません。 相手の立場になって考え、物の見方が自分本位ではなく、さらに相手に自分がどう映っているかを考え、相手の気持ちを踏まえた態度をとり行動する。 恕とはそういうことでもあります。 私共医療に携わる者の毎日の仕事の上で、思いやりの心は一番重要なことであります。 そうすれば見えないものも見えてくるし物事に対する対応も適切になり、しかも適切な行動がとれれば誤りは少なく、成功の確率は高くなります。成功すれば人間的な魅力も増してきます。 恕は人間の魅力を決定する言葉であり、深く噛みしめてみるべき言葉です。
医療法人社団 小白川至誠堂病院
理事長 松澤 克典(まつざわ かつのり)