3大栄養素

 生活習慣病、老化の予防に3大栄養素の理解が重要です。3大栄養素とは体を維持している糖質、脂質、蛋白質の事です。 

 糖質は脂質、蛋白質と異なり摂取により血糖を上昇させ、インスリン分泌を引き起こします。糖質は体内に吸収されるとブドウ糖となり、これを血糖と呼びます。血糖はエネルギーにはならず、分泌されるインスリンにより細胞内に取り込まれてエネルギーとなります。インスリンには血糖低下、細胞内ブドウ糖取り込み作用以外、過剰なブドウ糖を中性脂肪として脂肪細胞に蓄える作用、貯蔵糖であるグリコーゲンに変えて筋肉、肝臓に蓄える作用、脂肪分解を抑制する作用があります。種々の原因でインスリンの分泌、働きが低下、血液中のブドウ糖が過剰になった状態を高血糖と呼び、高血糖が持続する状態が糖尿病です。摂取した糖質を筋肉、脳等が使いきれないと、血糖は上昇、中性脂肪も脂肪細胞に蓄積、肥満が起こります。それ故、糖尿病、肥満の人は糖質制限が必要ですが厳しい制限はリバウンドを起こし、心臓病、脳卒中の死亡率も上げるとの報告もあります。なお高齢者では糖質制限はエネルギー代謝上、老化進行、ガン予防に重要と言われています。

 脂質は中性脂肪としてエネルギー源になります。食べ過ぎや運動不足で体は中性脂肪を溜め込むので脂質も肥満の原因となります。脂質はエネルギー源以外、保温、神経細胞・生体膜・ホルモンの材料、ビタミン吸収等にも重要な役割を果たしています。脂質には飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸がありますが体内でエネルギーとなり中性脂肪として貯えられるのは飽和脂肪酸です。飽和脂肪酸は主に肉類に含まれており、体内で合成可能な脂肪酸です。一方、不飽和脂肪酸は主に魚に含まれており体内で合成されない為、食事により摂取する必要があります。不飽和脂肪酸の中で多価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸と言われます。必須脂肪酸には大きくn-3系脂肪酸(ω3脂肪酸)とnー6系脂肪酸(ω6脂肪酸)があり、n-3系は血栓、炎症、アレルギーを抑制、脂質を下げ動脈硬化を予防、細胞機能の維持に関与します。青魚に含まれるDHA、EPA、エゴマに含まれるα-リノレン酸が代表例です。nー6系は生理的活性物質の生成に携わりますが過剰に摂取するとアレルギー、炎症、血栓、動脈硬化を促進します。現代の日本人はnー6系を過剰摂取しているのでnー3系とのバランスの良い食事が重要です。nー6系の代表例はサラダ油、マヨネーズ、ゴマ油等です。不飽和脂肪酸のトランス脂肪酸にも注意が必要です。トランス脂肪酸は天然には存在せず、マーガリン等の人工油の製造過程で水素を添加することにより発生します。トランス脂肪酸は体内で代謝されにくく、細胞膜の形成に使用されると細胞機能は低下、老化は促進、更には虚血性心疾患、ガン、アレルギー、認知症にも関与するとの報告があります。代表例はマーガリンですがインスタント食品、お菓子、冷凍食品、加工食品等に使われている可能性が高く注意が必要です。欧米ではトランス脂肪酸が規制されている所もありますが、日本ではまだ規制されておりません。なお飽和脂肪酸であるバターはこの点、問題ありません。

 蛋白質は体内でアミノ酸に分解され、肝臓に蓄えられてからアミノ酸として組織に送られて蛋白質が合成され、皮膚、筋肉、内臓、ホルモン、神経伝達物質、消化酵素等の材料となります。活性酸素を消去する抗酸化系の酵素、免疫細胞も蛋白質から作られます。アミノ酸には体内で合成されない、または不足する物があり必須アミノ酸と呼ばれ食品から摂取する必要があります。必須アミノ酸がバランス良く含まれている蛋白質を良質な蛋白質と呼び、代表例が卵、肉、魚、豆腐、納豆等です。蛋白質は一定期間で分解、排泄、補充を繰り返しており、貯蔵できないので制限すると細胞機能低下が起こります。その為、カロリー制限時も蛋白質は制限しないこと、すなわち良質な動物性・植物性蛋白質を摂取することが重要です。但し過剰に摂取すると残った蛋白質は分解され糖質や脂質の材料となること、腎臓病の人は蛋白質制限が必要なことには留意が必要です。動物性蛋白質の肉類は体内で利用されやすいですが、過剰に摂取すると脂質摂取過多、アレルギーの原因ともなるので魚とのバランス良い摂取が重要です。